ストレリチア秘話No.823 育種家の私はサンバードに敵(かな)わない

 南アフリカには私の知る限りレギーネの黄色原種は数株在ります。ダーバン植物園の矮性種以外は皆、堂々とした優れた品種ばかりです。これらは皆、自然が生み出した突然変異に違いないのですが、その母体となったオレンジレギーネの数は数千にも満たないのではないでしょうか。この変異は相当な高率といえます。

 黄色変種は一度に生み出されたではないにしても、ストレリチアの世代交代は、そう頻繁に起きるものではありませんから、この出現率に驚くのです。

 私は以前、何年も掛かって農家の切り花用にストレリチアの苗を生産してきました。一番多かったのがオレンジプリンスで15万本位でしたが、その中から一本も黄色変種は出ていません。私のやった交配はサンバードによる交配には全然、及ばなかったのです。今でも各種の交配を続けていますが、このサンバードに比べると人間のやる行動は、余り、大したことじゃあないな、と思っています。

 遺伝の組み合わせなら或る程度の可能性が期待出来るでしょう。しかし、突然変異となったら話は別で、夢、のまた夢のようなものです。でも育種家はギャンブラーではありませんから期待と夢は仕分けしています。突然変異とは遺伝子複製時の間違いや欠落で起こります。生物は正確に複製しなければならないので、普通は起きない事柄ですから期待など出来ないのです。それでも起きてしまうこともあるんですね。間違いですから大抵は死に至ることが多く、知られないまま消えてしまう事が多いのです。人が望む良い変異など少なく、滅多なことでは起きません。期待などしてならないのです。

 育種家の仕事は制限付きなのです。

 

 

 

 

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