ストレリチア栽培の末端の作業はさておいて、最も基本的な事柄に目を向けてみようとするのが、この章のテーマです。
植物は自分の生まれ育ったというか、発生した地域の環境を身につけていますが、それを極端にいえば、「その環境、そのもの」といえるほどなのです。私がストレリチアの自生地を取り上げるのは、昔話や世間話としてでなく、現在のストレリチア栽培の基本だからなのです。
ストレリチアは、現在、私たちの日本で生まれ育ったとはいえ、そこは、あくまでも移住先であり、ストレリチアの生き方を決定している遺伝は先祖から引き継いだものですから、相変わらず、先祖が生まれ育った環境を引きずっています。ただ、現在の生活の場が移住先に変ったので、それに合わせようとしているのです。つまり、栽培とは遺伝のしがらみからは離れられないけれど、移住先の環境にも合わせないと生きていけない、そのすり合せをすることなのです。
ストレリチアの自生地、東ケープ州のインド洋沿いの地域も気候は全部が一様ではありません。ケープタウンから始まる国道2号線はガーデンルートと呼ばれる風光明媚な地帯で半分ぐらいは雨量が多く高木の多い森林地帯が続きますが、その東の端にストレリチアアルバの自生地があります。そこから東側は雨量が減って、低木の草原地帯が始ります。そこがストレリチア無茎種の自生地なのです。ストレリチアは、どこにもあるわけではなく、生きられるわずかな場所にしかありません。
植物も勝手に生きられるわけではないのです。それを人工的に育てようとするのですから簡単なことではないでしょう。

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